エコキュートにおいて、特定のメーカーだけが「故障が多い」という客観的なデータや根拠は存在しません。エコキュートの信頼性は非常に高く、メーカーごとの故障率に大きな差はないというのが現状です。故障のリスクは、メーカーの差よりも、設置環境やメンテナンスの有無に大きく依存します。
主要メーカーは、いずれも厳しい品質管理基準のもとで製品を製造しており、基本的な耐久性に優劣はつきません。しかし、設置時の配管ミスや、井戸水などの特殊な水質が原因で部品に負荷がかかるなど、外部要因によって故障が引き起こされるケースが圧倒的に多いからです。
例えば、あるメーカーの機種で故障が目立ったとしても、それはそのメーカーの市場シェアが大きく設置台数が多いために相対的に情報が多くなっているだけで、故障率が高いわけではありません。メーカー選びで本当に重視すべきは、本体の機能や保証・アフターサービスの充実度です。
この記事では、「故障が多いメーカー」という誤解を解消し、エコキュートが故障する本当の原因と、万が一に備えて保証やサポート体制で失敗しないメーカーの選び方を詳しく解説します。この情報をもとに、不安なくエコキュートを選び、長持ちさせる方法を理解しましょう。
エコキュートで「故障が多いメーカー」は存在しない客観的理由
「特定のメーカーは故障が多い」という情報は、インターネット上で見かけることがありますが、客観的な統計やメーカー間の大きな品質差を示すデータは存在しません。
どのメーカーも高い品質基準で製造している事実
国内でエコキュートを製造・販売している主要メーカー(パナソニック、ダイキン、コロナ、三菱など)は、いずれも高い技術力と厳しい品質管理基準を持っています。
- 耐久性の均一性:
エコキュートは、高圧な冷媒を扱うヒートポンプや、水を貯めるタンクなど、高い耐久性が求められる部品で構成されています。これらの部品は共通の厳しいJIS規格(日本産業規格)や業界基準に則って製造されており、基本的な製品の信頼性に大きな差はありません。 - 技術の成熟:
エコキュートは登場から20年以上が経過し、技術が成熟しています。各メーカーの製品が一定水準以上の安定性を確保しているため、製品そのものの品質が原因で特定のメーカーだけが故障しやすい、ということは考えにくいのです。
特定のメーカーの故障が目立つのはなぜか(設置台数の多さなど)
特定のメーカーの故障情報が多く見られる場合、それはそのメーカーの製品が市場に出回っている台数が多い、つまり市場シェアが高いことによる可能性が考えられます。
- 母数の影響:
シェアが高いメーカーほど、当然ながら市場での総稼働台数が多くなります。そのため、故障や修理に関する情報(SNS上の報告や口コミ)の「絶対数」が多くなり、「故障が多い」という印象を与えやすいのです。 - 情報収集の偏り:
故障報告は、メーカーの公式な統計ではなく、個人の体験談や修理業者の情報に偏りがちです。これらの情報を鵜呑みにするのではなく、故障の真の原因を探ることが重要です。
エコキュート故障の真の原因は「設置工事」と「使用環境」
エコキュートの故障の多くは、メーカーの品質とは関係のない「外部要因」によって引き起こされます。特に以下の3つの要因は、寿命を大きく左右します。
初期設置工事が杜撰だと故障に直結する理由
エコキュートは、電気工事、水道工事、冷媒配管工事が組み合わさった複雑な機器です。初期の設置工事の質が悪いと、後々大きな故障につながります。
- 配管接続ミス:
冷媒配管内のエア抜き作業(空気抜き)が不十分だと、配管内に空気が残り、ヒートポンプの効率低下や、異常音、さらにはコンプレッサーの過負荷による故障を引き起こします。 - 基礎の不備:
貯湯タンクは満水時に数百kgになるため、設置する基礎が水平でなかったり、強度が不足していたりすると、本体にゆがみが生じ、水漏れや内部部品の破損につながります。 - 配線の接続不良:
電気配線やアース(接地)処理に不備があると、漏電やブレーカー落ち、制御基板の故障の原因となります。
信頼できる実績豊富な専門業者に設置を依頼することが、故障リスクを減らす最も確実な方法です。
地域特有の水質(井戸水・硬水)が故障を招くメカニズム
給水される水質がエコキュートの寿命に与える影響は非常に大きいです。
- 井戸水の使用:
井戸水には、水道水には含まれない鉄分、マンガン、砂、菌などが含まれていることが多く、これらがタンク内部や配管に溜まり、スケール(水垢)となって詰まりや腐食の原因となります。 - 対策機種の必要性:
井戸水を使用する場合は、必ずメーカーが推奨する「井戸水対応」や「耐塩害仕様」などの専用機種を選ぶ必要があります。標準機種で井戸水を使用すると、保証期間内であっても保証対象外となるケースがほとんどです。
メンテナンス不足が引き起こす致命的な故障
エコキュートは「メンテナンスフリー」ではありません。日常的なメンテナンスを怠ると、機器に大きな負担がかかります。
- 排水管の詰まり:
貯湯タンクの底に沈殿する不純物や水垢を定期的に排出する水抜きを怠ると、それらが配管を詰まらせ、故障や効率低下につながります。 - 給水フィルターの目詰まり:
給水フィルターがゴミや砂で目詰まりすると、水の流れが悪くなり、ヒートポンプに送られる水の量が不足し、空焚き状態に陥ってヒートポンプを破損させる原因になります。
故障リスクを回避!メーカー選びで重視すべき「保証」と「機能」
「故障しにくいメーカー」を探すのではなく、故障したときに迅速に対応してくれるメーカー、そして家族の要望に応える機能を持つメーカーを選ぶことが、賢い選択です。
本体保証とタンク・ヒートポンプ保証の期間比較
メーカー選びで最も客観的な指標となるのが「保証期間」です。
| メーカー | 本体保証期間 | タンク保証期間 | ヒートポンプ保証期間 |
|---|---|---|---|
| パナソニック | 1年 | 5年 | 3年 |
| ダイキン | 1年 | 5年 | 3年 |
| 三菱 | 2年 | 5年 | 3年 |
| コロナ | 2年 | 6年 | 3年 |
【保証期間のポイント】
- メーカーによる差: 三菱やコロナは、本体保証期間を他社より長く設定していることが多く、これが安心材料となります。
- 重要部品の長期保証: 貯湯タンク(5年~6年)やヒートポンプ(3年)といった高額な重要部品の保証期間に注目しましょう。
主要メーカー別!機能で見る失敗しない選び方(高圧給湯・バブル機能など)
メーカーごとに強みとする機能は異なります。故障率を気にするよりも、欲しい機能があるメーカーを選ぶべきです。
- ダイキン(高圧・パワフル給湯):
お湯を使う量が多い家庭や、3階への給湯、シャワーとキッチンで同時にお湯を使うことが多い家庭におすすめです。水圧の強さに定評があります。 - パナソニック(機能の充実):
「ぬくもりチャージ(排熱利用)」や「AIエコナビ」など、省エネや便利な機能が充実しています。機能性を重視する方に適しています。 - 三菱(キラリユ・バブル機能):
配管の自動洗浄機能や、お風呂の残り湯の菌を抑制する機能など、衛生面に特化した機能が充実しています。 - コロナ(耐久性と高圧):
業界初のメーカーであり、シンプルな設計と耐久性に強みがあります。寒冷地向け製品のラインナップも豊富です。
メーカーのサポート体制(修理受付窓口)の確認方法
万が一の故障時に迅速に対応してもらえるかどうかも、メーカー選びの重要な要素です。
- 修理受付体制:
24時間365日受付対応の窓口があるか、あるいはインターネットから簡単に修理依頼ができる体制が整っているかを確認しましょう。 - 連絡先の一元化:
故障の判断に迷ったときのために、メーカーのお客様相談窓口の連絡先をすぐに控えておくことが大切です。
ユーザーが実践すべき!エコキュートの寿命を延ばすメンテナンス
エコキュートの寿命は10年〜15年と言われますが、適切なメンテナンスを行えば、それ以上に長持ちさせることが可能です。これは故障リスクを回避する上で、メーカー選びよりもはるかに重要です。
貯湯タンクの「水抜き」手順と頻度
貯湯タンクの底に溜まる不純物(泥やスケール)を排出する「水抜き」は、最も重要なメンテナンスです。
- 頻度:
最低でも半年に一度(できれば3ヶ月に一度)行いましょう。 - 手順:
給水元栓を閉めた後、逃し弁(または安全弁)を開き、排水栓を開放してタンクの水を排出します。排出される水がきれいになったら、排水栓を閉め、逃し弁を戻してから給水元栓を開きます。 - 水質の確認:
水抜きした水が濁っている、あるいは異物が混じっている場合は、水質が悪化しているサインであり、メンテナンス頻度を上げる必要があります。
フィルターや配管の洗浄方法と、怠ると起こる故障
日常的な「お手入れ」を怠ると、熱効率の低下や、部品の負荷につながります。
- 給水ストレーナー(フィルター)の清掃:
給水元栓の近くにあるフィルターにゴミや砂が溜まると、水の流れが悪くなり、ヒートポンプの故障の原因となります。年に数回、歯ブラシなどで清掃しましょう。 - ふろ配管の自動洗浄機能:
ふろ配管の内部には、湯垢などが付着し、雑菌の温床となることがあります。自動洗浄機能がない機種の場合は、市販の洗浄剤を使った定期的な洗浄が必要です。
万が一故障した場合の修理費用目安と「長期保証」の賢い活用法
故障は完全に避けることはできません。万が一に備えて、経済的なリスクを理解し、長期保証を検討しましょう。
故障箇所別!修理費用の一般的な相場(平均5万~15万円)
エコキュートが故障した場合、部品交換が必要となるケースが多く、修理費用は高額になりがちです。
| 故障箇所 | 修理費用目安(保証期間外) | 発生時期の目安 |
|---|---|---|
| 電気基板(制御系) | 3万円〜8万円 | 導入後5年〜10年 |
| ヒートポンプ(コンプレッサー) | 10万円〜25万円 | 導入後7年〜12年 |
| 温度センサー・弁 | 2万円〜6万円 | 導入後5年以降 |
特に、エコキュートの心臓部であるヒートポンプユニットの交換が必要になると、20万円以上の高額な費用が発生するリスクがあります。
メーカーの長期保証(有料)は本当に必要か?
標準保証期間(本体1〜2年、タンク5〜6年)が終了した後に発生する高額な修理費用に備えるのが、有料の「長期保証」です。
- 必要性の判断:
エコキュートは高額修理リスクが高いため、導入後10年間安心したいのであれば、長期保証への加入は強く推奨されます。ヒートポンプが故障しやすいとされる7年目〜10年目のリスクをカバーできます。 - 費用対効果:
長期保証の費用は1万円〜3万円程度が相場ですが、一度のヒートポンプ修理で元が取れる可能性が高く、費用対効果は高いと言えます。
保証期間外の故障発生時にかかる本体交換費用
設置から10年以上が経過し、保証期間外でヒートポンプやタンクに重大な故障が発生した場合、修理ではなく本体交換が推奨されます。
- 交換のタイミング:
設置後10年以上で、修理費用が本体価格の半分以上になる場合は、効率の悪い古い機種を修理するよりも、省エネ性能の高い最新機種への交換を検討すべきです。 - 総費用:
本体交換には、本体代+工事費を含め、30万円〜50万円以上の費用がかかります。
まとめ
エコキュートにおいて、特定のメーカーだけが故障が多いという事実はなく、故障の原因のほとんどは設置工事の質やユーザーのメンテナンスに起因します。
- 故障回避の鍵:
信頼できる業者に設置を依頼し、半年に一度のタンクの水抜きと給水フィルターの清掃を欠かさず行うことが、最も重要な故障対策です。 - メーカー選びの基準:
故障率で選ぶのではなく、三菱やコロナのような本体保証が長いメーカーや、ダイキンの高圧給湯などライフスタイルに合った機能を持つメーカーを選びましょう。 - 経済的リスク対策:
ヒートポンプの故障は高額になるため、有料の長期保証に加入するか、万が一に備えて修理費用(5万〜25万円)の予算を確保することが賢明です。
この記事で解説した「故障の真の原因」と「賢いメーカー選びの基準」を参考に、安心してエコキュートの導入を進めてください。







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