特に近世までの日本は世界史上でも、高度な循環型社会を実現してきたことが知られています。
江戸時代には紙くずやろうそくの燃え残り、金属製品や屎尿などがリサイクルされ、エネルギーのロスを少なくする工夫がなされていました。
また、江戸の街には地下に埋設された木製の樋を通って上水道が整備されており、各所に設けられた井戸から水を汲み上げることができました。
このような循環型社会はしばしば現代の私たちにとっても立ち返るべきモデルケースと位置付けられ、特に環境保全の側面から省エネルギーへの強い意識付けと取り組みが必要となっています。
家庭生活においても日々の省エネは必須のもので、もっともエネルギーを消費するといわれる給湯関連の問題に対応するため電気で稼働する「エコキュート」などの高効率給湯器の普及が進んでいます。
現代でも地下水を利用する井戸が現役で使われているケースが見受けられますが、エコキュートではこうした井戸水の使用には制限が設けられている場合があります。
本記事ではエコキュートで井戸水を用いる場合について、なぜ使用に制限があるのか、使う際にはどのような条件があるのかを解説します。
エコキュートの仕組みとは?
まずはエコキュートとはどのような特徴を持つ高効率給湯器であるのかについて見ておきましょう。
エコキュートは電気によって稼働する給湯器であることを先に述べましたが、石油や天然ガスなどを燃焼させた熱でお湯を沸かす給湯器とは異なる仕組みで動いています。
また、電気をエネルギー源にするとはいっても、電熱で直接水を加熱する電気給湯器のような機構を指しているわけではありません。
エコキュートは「ヒートポンプ」と呼ばれる熱交換装置を備えており、この作用によって空気中から集めた熱を用いて水を温めています。
ヒートポンプは、「空気中の熱を集め」たうえで、「その温度を高める」機能を有しており、この特性によって少ないエネルギーでお湯を得ることを実現しているのです。
ヒートポンプ内部には熱を収集・運搬するための「冷媒」と呼ばれる気体が循環しており、かつてエアコンの室外機や冷蔵庫に使われていたフロンではなく二酸化炭素が使用されています。
この冷媒(二酸化炭素)が空気中の熱を集め、暖まった状態で圧縮すると温度が上昇します。これは気体の持つ性質を利用したもので、やがて水を60℃程度の温度に高めるほどの熱量を得ることを可能としています。
気体は反対に開放することによって温度を下げるため、水に熱を移した後の冷媒は開放で冷たくなり、再び空気中の熱を収集しつつ循環することを繰り返します。
さらにエコキュートには「貯湯タンク」が設けられていることも大きな特徴です。
ヒートポンプユニットの作用によって得たお湯を貯めておくタンクで、使用量によっていくつかのタンク容量がラインナップされています。
比較的電気料金の安い夜間に稼働させることがエコキュートの設計思想で、そうして得たお湯をタンクにためておいて日中に使用するというのが基本的な運用です。
お湯はお風呂やキッチン、洗面所など各所で必要な温度になるよう水で割って供給される仕組みで、一日に使えるお湯の量は貯湯タンクいっぱいの分を上回ることが一般的です。
タンクにお湯をためておくことから万が一災害などで断水した場合もしばらくは使用が可能で、冷めた後でも水のストックとなる点もメリットです。
このような特徴や性質から、エコキュートは省エネ性能と災害時の強さを両立した給湯器であるといえるでしょう。
エコキュートで井戸水の使用制限があるのはなぜ?
環境にも家計にもさまざまなメリットのあるエコキュートですが、当然ながら多くの場合は水道水の利用を前提としています。
しかし先にも述べたように現在でも井戸水を現役で使用している世帯が一定数存在し、井戸からの水源でもエコキュートを利用したいというニーズも少なくありません。
一方ではエコキュートでは井戸水の使用に制限を設けているケースもあり、状況によってはエコキュートを利用できないこともあり得ます。
では、このような現象はどういった理由で起こるのでしょうか。
結論からいうと、井戸水の持つ「地下水」という性質に由来する部分が大きいといえます。
それというのも、水道水とは異なり井戸水はカルシウムなど多くのミネラルを含んでいるという特徴があります。飲料水としてはこのようなミネラル分が美味しさの理由でもあるのですが、エコキュートの内部でこうした成分が結晶して成長すると、目詰まりや故障の直接的な原因となってしまいます。
また井戸水のなかには硫酸イオンを多く含む水質のものもあり、これはヒートポンプに多用されている銅管を腐食させる大敵です。
したがって井戸水に含まれる成分がエコキュートの機構にダメージを与え、通常よりも耐用年数が大幅に低下する可能性への懸念から「井戸水使用禁止」が一般的な措置となっているのです。
エコキュートで井戸水を使用できる条件とは?
しかしながら、井戸水であってもエコキュートで使用できるケースもあります。
その条件とはシンプルで、「エコキュートの稼働に問題のない水質」であることです。
つまり故障の原因となるミネラル分などを多く含まない水質の井戸水であれば使用には問題なく、そうした証明ができればエコキュートでも用いることが可能となります。
そのためには水質検査が必要で、これはエコキュートのメーカーでも有料で独自調査に対応するケースがあります。
エコキュート設置を希望する世帯が井戸水を使用している場合には自然と水質検査が必要となりますが、この結果によっては問題なく利用することができるようになるでしょう。
井戸水対応エコキュートで設置が必要な機構とは?
それでは実際に井戸水を用いてエコキュートを設置する場合、どのような追加措置が必要となるのでしょうか。
周知のとおり井戸水とは地下水を汲み上げて使用するもので、通常の上水道とは経路が異なります。
特に水質や水圧などの問題には配慮が必要で、そのための特徴的な機構を追加することが必要です。
以下に井戸水対応のエコキュートで追加の設置が必要な機構の代表例を3つ見てみましょう。
砂こし器
砂こし器とは文字どおり水に含まれる砂を漉し取るフィルターのことで、不純物がエコキュートの内部機構に侵入しないようガードする役割を果たすものです。
井戸水は天然の地下水をそのまま利用することが多く、土壌を通ってきた際に砂なども一緒に汲み上げてしまうケースが少なくありません。
ろ過しながら使うこともあれば汲み置いて砂などを沈殿させてから用いるともあり、いずれにせよ水道水と違って砂が混じることを想定する必要があります。
特に大雨の後などは水質や不純物の含有量に影響が出るため、井戸水の利用には砂こし器が不可欠です。
もしそのままの状態でエコキュートに用いた場合、目詰まりや内部機構故障など深刻なダメージの原因になる可能性が高いといえるでしょう。
家庭用浅井戸ポンプ
井戸水のエコキュート利用には水質以外にも重要なハードルがあり、その代表格が「水圧」の問題です。
井戸水は地下水を汲み上げるものと繰り返し述べてきたように、かつては釣瓶や手押しポンプで地下深くから取水する必要がありました。
現代の井戸ではほぼ電動のポンプで汲み上げられていますが、エコキュートでそのまま用いるためには水圧不足であると考えて差し支えないでしょう。
そのため水圧を安定させる家庭用浅井戸ポンプを設置することが求められ、さらにはより安定的かつ充分な水圧を確保できるインバーターポンプが推奨されています。
もともとエコキュートの機構上、水道水を使ったとしても水圧が不足する傾向を指摘されており、デメリットの一つと捉えられることがあります。
井戸水の使用ではその点がより際立つことから、使用に堪える水圧の担保には配慮が必要です。
エコキュートのなかには高水圧タイプの機種もあるため、あわせて検討するとよいでしょう。
止水栓
止水栓は読んで字のごとく、水を止めることを目的に設置される栓のことです。
エコキュートに使用する井戸水の経路では、特に砂こし器の手前と家庭用浅井戸ポンプの次の2箇所に設けるのが一般的です。
つまり、井戸水の汲み上げ→止水栓1→砂こし器→家庭用浅井戸ポンプ→止水栓2の順で設置されるもので、非常時に迅速に水を止められるよう万全を期すものです。
それというのも井戸水の水質は不安定で、不純物の混入なども頻繁に起こる可能性が高いため即座に流入経路を遮断することがエコキュートの故障防止につながるからです。
精製された水道水は根本的に異なることを念頭に入れ、自身でも常日頃のメンテナンスが必要であることを理解しておきましょう。
井戸水対応型のエコキュートがある?
基本的に井戸水の使用は禁止されているエコキュートですが、なかには地下水・井戸水に対応する機種も登場しています。
通常のルートとは異なる設置法であったり、やはり水質検査をクリアする必要があったりと一定の条件が課せられていますが、メーカーに問い合わせて確認することが重要です。
まとめ
最後まで記事をご覧いただきありがとうございました。
この記事では井戸水に対応するエコキュートについて、なぜ地下水に問題があるのか、それらを解消するには具体的にどのような方法があるのかを解説しました。
井戸水は現代でも現役で使われていることが少なくなく、豊富な水資源を持つ日本の国土ならではの文化もいえるでしょう。
エコキュートの自然環境保全という命題と併せて、積極利用が求められるジャンルの一つといっても過言ではありません。
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